戦後の日本経済の発展は、高速道路などに代表されるインフラストラクチャーの整備を抜きには語れません。たくさんのモノと人をいかに効率よく運べるか?という点が重視され、それを実現してきました。しかし、いくら交通網が発達して便利になっても、高齢者や子どもたちが車におびえて歩いているような街は、本当に良い街だと言えるでしょうか。私たちが土木と聞いてまずイメージする橋などの建設は、地形や風の向き、海流など様々な条件の中で、その状況に応じた工法を検討し、課題を乗り越えながら作られています。土木工学は、技術者としての経験が物をいうことから、“経験工学”とも呼ばれていますが、同じ土木工学が扱う“まち”は人が暮らし安心して住まう場所。橋や道路を建設するときに技術者が経験を生かしてそれぞれに合わせたアプローチを行なうのであれば、同じ“経験工学”によるまちづくりも、そこに生活する人を中心にデザインしていくことが大切なのです。