建築設計やインテリアデザインにおいて、居心地のよい空間を検討する際、私たちは空間のレイアウトや見た目、材質の肌触りや断熱性能などには気を配るものの、音についての配慮を忘れがちです。しかし、暑すぎる室内では快適に生活できないのと同じように、うるさい場所では眠りにくいし、音の反響が大きい部屋では、会話もしづらいはず。快適な空間づくりには、音環境について検討することも非常に重要です。「室内を静かにするためには遮音をすればよいのですが、建築物の防音性能を高めるには限界があります。また、静かすぎる環境では不安を覚えて落ち着かないなど、遮音しすぎるとかえって居心地の悪い空間になってしまう場合もあります。そのため音環境について考える際は、防音や騒音削減というアプローチだけでなく、『その空間の音を人はどのように感じるのか』という視点で考えることも大切なのです」そう語るのは、大同大学建築学部建築学科建築・インテリアデザイン専攻の森長 誠先生。心理音響学を専門にしている森長先生 は、まちを走る自動車や電車の音など、環境騒音がもたらす人の心理的・生理的な面への影響を客観的に評価する研究に取り組んでいます。